子竜の年代記

同人関係に限らず、レビューや雑記とか。

【エロゲ】すたじお緑茶倒産の噂を調査してみた

現在、Twitter上でまことしやかにささやかれている噂があります。
それは、エロゲブランド「すたじお緑茶」が倒産したのでは? という噂です。

 

私の知る限り最初に流れたツイートがこちら

 

あくまで噂としてしか語られていなかったので、明確なソースはどこだと調査したのですが……結論として、すたじお緑茶が倒産、あるいは解散したという明確なソースは発見されませんでした

調査の結果、噂が広まるに至った経緯としては以下のようなものでした。

 

■直近の新作である「夏彩恋唄」のアペンドシナリオが発表されない

2016年11月に発売されたすたじお緑茶の新作「夏彩恋唄」ですが、予約特典としてアペンドシナリオのリリースが予告されていました。
にもかかわらず、一年近く経過した現在もアペンドシナリオのリリースは行われていません
作品HPを見ると、2017/01/22に「アペンド投票結果発表」のNEWSが掲載されており、以降リリースされた形跡はありません。それ以外にも、リリース予定のコンテンツがリリースされていないなど手が行き届いていない状況がうかがえます(それでも2017年夏の電気外祭りには参加していたようですね)。
元々アペンドシナリオがリリースされないことを不安視、問題視するツイートは散見されましたが、あまりに時間が経ってしまったために、いよいよ「もしかしてすたじお緑茶は死んだのでは?」という憶測が流れたのが事の起こりではないかと考えています。

 

ちなみに、すたじお緑茶のHPを見ると前作「はにかみCLOVER」と新作「夏彩恋唄」しか紹介されていないのですが、それ以前に発売していた作品はどこに行ったのでしょうか……?

 

■新規ブランドのティザーサイトに掲載されている参加クリエイターがすたじお緑茶関係者である

そんな折、その憶測を更に加熱させるある情報が飛び込んできました。
それは、11/1に発表された新規エロゲブランド「みらーじゅそふと」および新作ティザーサイト公開のおしらせでした。

 

正式な情報公開は11/10を予定しているとのことで、現在はメインヒロインのシルエットと主要クリエイターの情報くらいしかありませんが、その主要クリエイターの情報を見ると


・原画:るちえ/kakao
・メイン彩色:赤人


となっています(シナリオライターはここに載っていないんですね……)。
原画のるちえ先生は「夏彩恋唄」の、kakao先生は「はにかみCLOVER」の原画を担当されています。
このあたりから、「すたじお緑茶はみらーじゅそふとに移行したのでは?」という噂に繋がったのだと考えています。

 

というわけで、現時点では公式発表などはありません。もし倒産あるいは移行していたのであれば、公式発表がないまま自然消滅……ということも十分に考えられます。

私自身、すたじお緑茶の作品は「マジカライド」しかプレイしたことがないのですが、それなりにネームバリューのあるブランドとして注目していましたので、今回の騒動は驚きのあまり調査に乗り出してしまいました。

11/10のみらーじゅそふとのHP公開やその後の情報を追いながら、実際のところを探っていくしかないですね。

 

エロゲ業界に光あり、しかして闇は未だ深し

すっかりエロゲ関連のブログになってしまいましたね。それでいいんじゃないでしょうか(適当)。

先日、ねとらぼに以下のような記事が掲載されていました。

nlab.itmedia.co.jp

ねとらぼはアイティメディア株式会社が運営するニュースサイトで、個人が運営するまとめブログのような偏向はあまりない(全くないとは言っていない)こと、またオタク界隈のニュースを取り上げたり、オタクが気にするあんなことやこんなことを積極的に調査・発信してくれるメディアとして注目しておりました(余談ですが、本業関係の情報収集でもITmediaにお世話になっていたりします)。

そんなねとらぼがエロゲ業界に関する記事を発信してくれることは、業界の知名度アップに繋がり、新たなエロゲプレイヤーが増えるのではないかと期待しています。

さて、今回記事を書いたのは、上記記事を読んで思ったところがあったからです。
あらかじめ申し上げておくと、上記記事を否定しようとかそういう意図があるわけではなく、上記記事も業界の一面ではあると思うのですが、記事の内容とは異なる側面もあると思っており、記事の内容だけが伝わることにちょっとした不安を抱いたからです。もちろん拡散力の差があるので記事を読んだ全員に伝わるものではないと思いますが……読んだ方が少しでも見識を広められるのであれば幸いです。

 

◆業界のトップクラスたる「ノラと皇女と野良猫ハート」の宣伝力

上記記事は、エロゲブランド「HARUKAZE」の代表であるはと氏および広報に、記事の執筆者であるにゃるら氏が、アニメ化もされた最新作「ノラと皇女と野良猫ハート」の話題を中心にインタビューを行うというものでした。
具体的な内容は記事を見ていただくのが一番だと思いますが、記事を読んで一番驚いたのは、「ショートアニメはHARUKAZEが全額出資して制作した」というものでした。
つい数ヶ月前の記事で「いくつもブランドが潰れていってる。エロゲ業界ヤバい」と言ったわけですが、まさかその数ヶ月後にこんな景気のいい話題を目にすることになるとは思ってもみませんでした
上記の内容が本当であれば、HARUKAZEは相当な資金を持っていることになります。それを適切に使い、多くのユーザーを獲得し、成功へと導いているのだなと、記事を読んでいて感嘆いたしました。


◆「ノラと皇女と野良猫ハート」は業界最上位の成功事例である

しかし、他の多くのエロゲブランドは、今回のHARUKAZEのような潤沢な資金を持っていないことがほとんどです。
忘れてはならないのは、HARUKAZEのような形態で大々的に広報活動できるブランドは限られているということです。

最近だと、よく「ソシャゲは出せば売れる」の事例として「Fate/Grand Order」が挙げられるのを目にしますが、FGOは現代ソシャゲの突出した成功事例であり、その陰には売り上げ低迷によって早期サービス終了を迫られた作品が多数存在することを忘れることはできません。

nlab.itmedia.co.jp

nlab.itmedia.co.jp

ねとらぼにも直近で複数の記事があるんですよねえ……。

冒頭の記事の末尾には、ライターであるにゃるら氏の意見として、

美少女ゲームが言われているほど斜陽でなく、こうして勢いと信念のある新規メーカーが台頭した事実がうれしい

といったことが書かれています。確かにHARUKAZEは期待の大型新人という形で今後の業界を牽引できる存在であることは間違いないと思います。ただ、ノラととという大きな成功事例を挙げただけで斜陽でないと言い切るのは難しいのではないかなあというのもまた、記事を読んだ率直な感想だったりします。


◆業界の闇ばかり追いすぎた反省

一方で、私は逆に業界のヤバいところばかり追いかけて、良い成果を上げている作品やブランドがどのような施策を打って成功したのかという点にはあまり目を向けていなかったなと反省しております。業界の全てがヤバいのではなく、良いところもあれば悪いところもある、ということをしっかり認識して、個人の意見としてヤバいところをなんとかしたいという想いで今後も活動していければと考えています。

また、記事には興味深い一文として

今はもう美少女ゲームを卒業した世代が、最近の作品を遊ばず好き勝手言い始める段階にきているので、こうしてメーカー側の現状を語ってくれるのは非常に助かります。

というものがありました。
私自身はTwitter上では現役エロゲ―マーや業界関係者しかフォローしていないため、卒業世代というものが存在していて好き勝手言っているところを目撃したことがないのですが、やはりというかどうあっても外部から好き勝手言う人間はいるものなのですね……。

 

と、このように光と闇の混じり合う混沌とした時代ではありますが、今後も広い視野で業界を見つめていければと考えています。

曲がりなりにも物書きとして、自ら旗を揚げたい気持ちがないわけではないですが、まだ今は力を蓄える時期と判断しています。実力的にも資金的にも……。

外野の意見に惑わされず、しかし取り入れるべき意見は取り入れ、現役プレイヤーや現在興味を持っている人、今後興味を持つ素質のある人を中心とした活動を業界全体として推進できることを願います。

エロゲ、アニメ……サブカル業界は「変わらないからこそ」変化している

お久しぶりです、子竜です。

6月に投稿した記事「なぜ今エロゲ業界がヤバいのか? 一般エロゲーマーの思うところ」をお読みいただいた方におかれましては誠にありがとうございます。

 

shiryuk.hatenablog.com

shiryuk.hatenablog.com

 

投稿した当初はほとんど閲覧されることなく、日間100PVくらいの微々たるものでしたが、7月のとある数日でPVが急激に伸び、突然のことに何が起きたのかと慌てて調べました。
どうやら、エロゲ業界関係者がこのブログを引用してTwitterで言及されたようで……その引用を見た人がさらにホームページにこのブログを掲載するという連鎖が発生し、それによって一時的にPVが跳ね上がったようです。やはり影響力のある人に発信していただくというのは効果があるのだなあと実感すると同時に、自分自身にそれだけの影響力がないことも痛感した次第です。

さて、こうして多くの方に言及していただいたり、ありがたいことに本当にメールを送ってくださった方もいらっしゃいました。それほどまでに思うところがある方がいるということで、やはり非常に関心の高い問題なのだと実感しています。
そして、そういったメールや言及の数々を見ていると、大変残念なことに私の考える現状の問題がおおよそ現実であり、大きな誤りはないということがわかりました。私の懸念は考えすぎで、エロゲ業界はそのような危険な状況ではないのだという反対意見を待っていたのですが、その、ありませんでした……。

ということで、現実は現実として受け入れ、その上で未来を見据えて動かなければならないでしょう。

今回はそうした経緯を踏まえて、現在起きている変化について簡単にですがまとめておきたいと思います。

 

◆行き詰まるサブカル業界

エロゲ業界に限らず、アニメや漫画、ライトノベルといった業界も、昨今では売り上げが低迷し、業界全体として厳しいという話を耳にします。
市場がある程度成熟してしまった以上、仕方の無いことではありますが、だからといって業界の衰退を眺めているだけ、というのはまさに自殺行為です。

私が観測している範囲でも、ここ数年で少しずつ業界の大方針的なものに変化が起きているように思います。
例として紹介するのは以下の2点です。

・あっぷりけのエロゲ制作クラウドファンディング
・オタク向けアニメ映画の週次来場者特典

 

■あっぷりけのエロゲ制作クラウドファンディング

前回のブログ記事でも紹介したとおり、エロゲブランド「あっぷりけ」のディレクターである憲yuki氏ニコニコ生放送を開き、重要なお知らせを行いました。

・あっぷりけの10周年であること
・10周年記念となる新作の制作ができる資金状態にないこと
・資金調達がままならず、新作の制作が困難である以上、ブランドを畳むことも考えたが、まだやれることがあるはずとし、クラウドファンディングによる新作制作資金調達を行うこと

ざっくりと要点をまとめるとこんなところでしょうか。
あっぷりけの作品は「コンチェルトノート」で初めて知ったのですが、シナリオフローチャートなどとても丁寧な作りで好感を抱き、シナリオも非常に高品質で感動を覚えました。

特に、直近の新作である「時を紡ぐ約束」は私の地元である大分県を舞台にした作品であり、そういった意味でも応援しているブランドでありました。

そのあっぷりけですら、活動が立ちゆかなくなるほどの状況である……これははっきりいってかなりの衝撃でした。

ディレクターの憲yuki氏も重要なお知らせニコ生やその後のニコ生およびツイッター、CFサイトなどで語られている通り、クラウドファンディングを行うことについては業界の内外問わず賛否あることでしょう。
特に、今回は一般的なクラウドファンディングにある「新機軸の製品を考えたけど制作費がないから出資して欲しい」という形ではなく、ぶっちゃけ「いつも通りの作品を作りたいけど制作費がないから出資して欲しい」というもので、それをその場しのぎの延命措置と見るのは至極当然の考え方です。
もちろん、ブランド側もそれを承知で今回の企画を立ち上げたわけですし、出資する側もそれを理解した上で……という形になっています。賛否があろうとても、やりたいからやる、というブランドの姿勢は、賛否ありこそすれ排除されるものではないと考えています。

また、一部には「これが悪しき前例となり、今後同様のことを考えるブランドが増えるのでは」や「結局その場しのぎで先行きが不透明なのだから、また次回作の制作費が足りずクラウドファンディングになるのでは」といった意見もあります。
その懸念はもっともですし、現状の業界を考えるとそうなる可能性は決して低いものではない……例えば、これで見事調達に成功すると、後を追うブランドがないとは言い切れません。

ですが、私は今回のクラウドファンディング企画、並びに今後も他ブランドや次回作で制作費調達(全額、一部問わず)のクラウドファンディングが今後行われることに対しては別にいいんじゃないかと考えています

そう考える理由は2点あります。

1点目は、「そうしてでも守りたい業界・作品なら、そう思っている人が多く出資して守るというのもひとつの考え方ではないか」と考えているからです。
本当に、心から欲しいと願うものであれば、それがいくらであろうとある程度なら価格を気にすることなく購入するのがファンの性というものです。従来の定価よりも数倍程度の金額を出して作品を購入するというのはもちろん安い買い物ではありません。ですが、そうしなければ望みの作品は手に入らない……逆に言えば、結果として望みの作品を手に入れることができるというなら、多少多めに支払うことも致し方なしという考え方もなくはないでしょう。
……まあ、あくまで致し方なし、程度かなと。喜んで出資する、という人はもちろんいると思いますが、それが大多数というわけではないでしょうし。「本来ならクラウドファンディングなどしなくても資金調達できるのが当然で、クラウドファンディングをせざるを得ない状況、一部のファンから多くの出資を求めざるを得ない状況が異常なのだ」というのが正論でしょう。
ある程度ファン層だけで固まった、狭い業界だからこその互助的な考え方ですので、前向きな考え方ではないですが……ひとつの意見としてはアリじゃないかと考えています。

そして2点目は、「これまでになかった大きなリターンを得ることができるというメリットが新たに発生した」というものです。
これまではエロゲのグッズといってもせいぜいがコミケや電気外祭りで販売されるグッズ、あるいはショップの予約特典程度しかありませんでした。
しかし、あっぷりけのクラウドファンディングのプラン一覧を見ていると、オープニングムービーに自分の名前が載るとか、ヒロインからお礼ボイスがもらえるとか、打ち上げに参加できるとか……これまではお金を積んでも得られなかったそのエロゲ作品関連のあれこれを、多額の出資さえすれば得ることができるのです。
これまではエロゲの複数買いやコミケ参戦などでいくらお金を積んでも得られなかったものが、今回は得られる。そして、好きなブランドに出資して作品の制作に貢献できる……これは、コアなファンにはたまらないものでしょう。
個人的には、エロゲ業界には資金難によるクラウドファンディングでなくとも、こういった出資額に応じた多様なリターンを得られるクラウドファンディングをもっと増やしてコンテンツの幅を広げて欲しいという想いもあるのですが……それは今は置いておいて。

とまあ、私の私見を述べさせていただきましたが……果たして今回のあっぷりけクラウドファンディングは成功を収めるのか、はたまた失敗してブランドが潰えるのか……私自身もいちあっぷりけファンとして出資しながら行方を見守りたいと思います。

↓あっぷりけのクラウドファンディングサイトはこちら

uneedzone.jp


■オタク向けアニメ映画の週次来場者特典

私が「業界が縮小しているなら、ファン層から多額の出資を求めるのは全くの間違いとは言いがたい」と考えている理由のひとつに、最近のオタク向けアニメ映画があります。
オタク向けアニメ映画として、私が最近鑑賞したのは「劇場版 艦これ」と「劇場版 魔法少女リリカルなのはReflection」の2作品です。
この2作品に共通する事項として、「劇場来場者特典が毎週変わる」というものがあります。
例えば、「劇場版 魔法少女リリカルなのはReflection」では映画のラストに特典映像が放映されますが、その内容は毎週変更になります。
つまり、全ての特典映像を見たいのであれば、毎週映画館に通い映画を見なければなりません。特典映像を除く、映画本編の内容は全く変わらないのに、です。
それでも、私はこの作品を2週連続で見に行っています(3週目も行きます)。やっぱり映像特典は気になりますので……。

 

◆おわりに:時代の流れをどうするか?

上記に紹介したとおり、こうしたゲームやアニメなどのいわゆるサブカル業界は現在、「業界規模が縮小しているならば、コアなファンにより多くのお金を落としてもらえる仕組みを作ることで業界を成長・維持しよう」と躍起になっているように見受けられます。

特に、スマホやブラウザ上でプレイする基本無料ゲームの課金要素などは最たるもので、無課金勢と廃課金勢で1つのゲームタイトルにかけた金額の差などは数えるまでもないでしょう。
これは、業界が今までと変わらずあり続ける限り、避けられない時代の流れなのだと考えています。

こうした時代の流れに呑まれて消えていくのも、流れに従って流れるままを生きるのもひとつの道でしょう。あるいは、今の時代の流れを良しせず、流れを変えるべく変革を期するのもまた自然な流れです。

サブカル業界はこれからどうあっていくべきか。どうあってほしいか。そのために、私に何ができるのか。
まだまだ考えることは尽きず、また決定的な答えを出すには至っていないのが現状ですが、ひとつでも、小さくても答えを得られるよう、今後も情報や知識を収集して行きたいと考えています。

 

もし本記事を読んで、「もっと詳しく話を聞きたい」とか「お前は業界関係者を怒らせた。記事は即刻削除しろ!」とか「その知見でぜひ弊社のブランドに力を貸してほしい」などのお話をいただけるのであれば(最後のはちょっと自意識過剰ですが……)、
kurama.shiryu@gmail.com
までメールをいただけますと幸いです。

簡単な質問やご意見ご感想、記事内容の誤りなどございましたら本記事にコメントをいただければと思います。

 

それでは、きっとまたお会いしましょう。

なぜ今エロゲ業界がヤバいのか? 一般エロゲーマーの思うところ(後編)

◆はじめに

前回の記事では、現在のエロゲ業界がどのような状況にあるのか、エロゲのどこに問題があるのかについて整理してきました。

後編となる本記事では、あるブランドが実施した解決策のひとつを例に挙げ、その内容を評価してみたいと考えています。

最後に、どのような考え方があるのかについて紹介させていただきます。前回の記事で問題として挙げた「エロゲ購入はハードルが高い問題」「エロゲのコンテンツ鮮度短すぎ問題」を解決するためのアプローチとして、机上の空論ではありますがいくつか案を出させていただきましたのでそれを紹介していきます。

 

◆事例から考えるエロゲのあり方 

■「あっぷりけ」と「暁WORKS」のIP戦略について

最近では、有名エロゲブランドの「あっぷりけ」と「暁WORKS」がスマホ向け全年齢版ノベルゲーム(ライトビジュアルノベルと紹介されています)「月影のシミュラクル」や「緋のない所に烟は立たない」を無料でリリースしたことが話題になりました。
ディレクターの憲yuki氏が電撃姫に寄稿した記事には「無料公開によってIP(知的財産)を得て、後のパッケージ販売につなげる」旨のコメントがあり、非常に意欲的な試みとして注目していました。

dengeki-hime.com


しかし、私の観測する限り「月影のシミュラクル」や「緋のない所に烟は立たない」の無料公開が大きな注目を集め、パッケージ版が既存の作品と比べて大幅に売れたようには思えないのです。


スマホとノベルゲームは相性が悪い?

少し話は脱線しますが、エロゲ―マーの皆さんはスマホをいつ、何に、どれくらい使うでしょうか?


私の場合、スマホは主に以下のようなタイミングで使います。
・通勤/退勤中の電車内
・会社の昼休み
・家でたまに

 

主な使用アプリは以下のようなものです。
ツイッターのクライアントアプリ
・読書アプリ(Kindleなど)
・Webブラウザ
・将棋の観戦アプリ、対局アプリ
・ゲームアプリ(「はねろ! コイキング」「遊戯王デュエルリンクス」など)

 

そして使用時間はというと……それほど長くはありません。
通勤電車に乗っている時間は40分程度、昼休みは1時間。これくらいです。
なぜなら、家に帰ればパソコンがあって、パソコンに向き合うことになるからです。

 

これは私自身の例ですが、同じような行動パターンの方は結構いらっしゃるのではないでしょうか。
そうするとどうなるかというと、「限られた時間の中で、限られたアプリを使用する」ことになり、必然的に1つのアプリにかけられる時間は短くなります。
そうすると、必然的にスタミナ制などで「起動しなくちゃ!」と思わせるソシャゲの優先度が高くなるのはある程度必然と言えるでしょう。


つまり、「ダウンロードはしたけど結局プレイしてない……」というプレイヤーも多いのではないでしょうか。それではいくら無料でプレイできたとしても意味がありません。
加えて、ノベルゲームはシナリオの区切りが難しく、短時間でキリをつけることが難しいものです。
「時間のある時にじっくりプレイしよう」と考えて、結局プレイしない……というパターンもあると考えています。

 

これは、既にソシャゲという強力なシェアを誇っているジャンルがあるスマホという領域に、ノベルゲームは適していないことを意味しています。

このことには私自身ひどく驚きました。フリーゲームとして公開されたので「なんて太っ腹な!」と思っていたのに、いざダウンロードしてもなかなか起動しないという……。


もしかすると、「どうせ無料だから急いでプレイすることないや」みたいな、無料であるがゆえに特別感がなくプレイするモチベーションが上がらないということもあるかもしれません。このあたりの心理面の作用については私自身ももう少し考えたいと思っているところです。

スマホを使ってIPを獲得しようとするならば、スマホならではの手法を使う必要があるということでしょう。


※余談ですが、明日(6/10)にあっぷりけと暁WORKSから重要なニコ生が行われるとのことです。やはりといいますかブランド側も現状に危機感を募らせていることがうかがえ、実際の業界の方がどのような考えを持っているのか、どうしようとしているのか知りたく、また微力ながら自分にできることがないか考えるべく視聴したいと考えています。

 

 

◆本題:じゃあどうすればいいのさ?

ここまで、偉そうに「エロゲはこういうところが良くない」とか「ソシャゲはここが良い」と、なにかとエロゲを下げる発言をしてきました。これはあまり本意ではないのですが、どうしても比較というのは必要なもので……ご容赦いただけますと幸いです。
しかし、私は決してエロゲはもう終わりとか、エロゲがなくなるとか思っているわけではありません。
だって、私はエロゲが大好きなのです。エロゲにも良さがあって、好きなプレイヤーはたくさんいて、高かろうとなんだろうと気に入った作品は購入してプレイするのです。


現時点で考えられるのは、そういう状況により多くの人を巻き込むといった観点でしょうか。以下は現在考えている施策案になります。

 

■分量を分ける、価格を下げる、そしてリリースサイクルを短くする

これは最近「フロントウイング」が「グリザイア ファントムトリガー」で実践されている手法で(ファントムトリガーは全年齢向けですが)、高価なゲームを買うというハードルを下げるために価格を下げ、その代わり分量は少なめ、そして新作発売までの間隔を短くするというものです。


確かにこれならですし、しかもコンテンツが長く続くので従来の作品に比べれば長くそのコンテンツを楽しむことができます。
最初から完全に完成したものを販売するのではなく、ある程度分割して都度リリースする……この考え方は一考の価値があるのではないでしょうか。


もちろん、ただ分割すればいいというものでもありません。分割することに意味があるような効果的な手法を取り入れる必要があったりと、考えることは増えることになるでしょう。それでも、うまく活用できれば非常に大きな武器になると考えています。

 

(23:40追記)ただし、私はこの手法でもまだ「足りない」と考えています。本題の項目に書いた通り、高かろうとなんだろうと好きな作品は買うのです。逆に言えば、価格はあまり関係ないのです。

重要なのは「購入」は「基本無料→課金」よりも心理的ハードルが高いということで、それを「購入」という前提を変えられないとするならば、可能な限りその心理的ハードルを緩和する必要がある、というのがここで言いたかったことでもあります。

 

■なんとかエロゲもフリーミアム化できないものか

フリーミアムとはソフトウェアの形態のひとつで、基本機能を無料で使用でき、後に課金することでより高性能な機能が解放されるというものです。

ゲームでいうと「スーパーマリオラン」が代表格でしょうか。あのゲームも前半ステージまでを無料でプレイできて、固定額の課金によって全ステージ開放して遊ぶことができるというものでした。


エロゲにおいても同様で、たとえば体験版をWeb無料公開してまずはダウンロードしてもらい、面白ければその体験版から直接課金して追加シナリオを解放……という形にすることができれば、購入への敷居を大幅に下げたり、課金に対するハードルを下げることもあるいはできるのかもしれません。
無料で体験版を配布したとして、そこから課金に繋げることができるかは……作品の力次第だと思います。

 

課題としては、現状では体験版から課金するための仕組みがないこと、課金して解放したゲームのライセンス管理(コピー対策等)、まず体験版をダウンロードすることが習慣化できていないことへの対策、その体験版を一元的に管理・配信できるプラットフォームの整備あたりでしょうか。

 

■パッケージの物理販売にこだわらない

これは物流などのエロゲ業界の事情を一切考慮せず言ってしまうのですが、現在主流のパッケージ販売はそういった流通やパッケージに縛られた融通が利かないシステムになっています。インターネットを活用してより柔軟な形態で展開するならば、物理に縛られるのはあまり得策ではありません。


しかし、パッケージであることに一定の価値があることも事実です。やっぱりケースに入ったDVDで欲しいという人は多いですしね。
あくまでパッケージ販売は手段のひとつであり、インターネットを活用して家でもすぐに購入してプレイできる環境を用意しておくことは重要だと考えています。

 

 

これらはあくまで、既存のエロゲの延長線上にあるものです。例えばスマホでもうまいこと楽しめるエロゲが作れないかとか、ソシャゲのようにWebサーバー+データベースを活用したゲームを作れないかとか、全く異なるアプローチについても検討しているのですが、いかんせんそのあたりの理解が浅いため、今回はここまでとさせていただければと存じます。

 

 

◆おわりに:エロゲ業界に限った問題ではない

この問題は、エロゲ業界に限った話ではありません。類似の業界でいえばラノベもそうですし、直接関係ないところでいうとカメラ業界とか印刷業界とか……とにかく競争が激しく、苦しい状況にある業界は多々存在しています。
かくいう私もそうした競争が激しい業界に身を置いており、厳しい現実と向き合っているところでもあります。
そんな折、現状を打開するための何らかのきっかけになればとマーケティング関係の本を読み始めたことがきっかけで、エロゲ業界についても見直してみることとなりました。

 

繰り返しになりますが、私はエロゲが大好きです
大好きだからこそ、現状をただ眺めているだけではいられなくなってしまいました。

 

私は、大好きなエロゲが時代の流れに取り残されることなくこの先生きのこることを願ってやみません。
この記事が業界関係者の皆様に何らかの気づきを与え、変革に繋がるのであればそれに勝る喜びはありません。


今回の記事だけでは語り尽くせない、作品以外のこともあるわけでして、そういったところも今後何らかの形で紹介していければと思います。

 

 

このような長文記事をここまで読んでいただきありがとうございました。願わくばこの記事が多くの業界関係者の目に留まり、何らかのリアクション(良くも悪くも)をいただけると幸いに存じます。

 

もし本記事を読んで、「もっと詳しく話を聞きたい」とか「お前は業界関係者を怒らせた。記事は即刻削除しろ!」とか「その知見でぜひ弊社のブランドに力を貸してほしい」などのお話をいただけるのであれば(最後のはちょっと自意識過剰ですが……)、
kurama.shiryu@gmail.com
までメールをいただけますと幸いです。

簡単な質問やご意見ご感想、記事内容の誤りなどございましたら本記事にコメントをいただければと思います。

 

それでは、きっとまたお会いしましょう。

なぜ今エロゲ業界がヤバいのか? 一般エロゲーマーの思うところ(前編)

◆はじめに

あらかじめ申し上げておくと、私はエロゲ業界の人間ではありません。同人小説書きという肩書はこの場においてなんの役にも立たず、いちエロゲ―マーと名乗った方がより意味があるでしょう。ですが、エロゲを愛する人間のひとりとして、現状を現状のままにしておきたくないという想いがあり、稚拙ながらこのような記事を書かせていただきました。
本記事は、あくまでファン目線で現在のエロゲ業界について思っているところ、エロゲ業界に限らず思っているところ、今後について思うところを書いていければと思います。
上記の通り「思うところ」程度の発言しかできないので、信頼性や正確性に欠けるところもあるかと思います。大変恐縮ですが、内容に関する指摘、クレームなどはしっかり受け止めていきたいと思いますので情け容赦ないコメントお待ちしております。

 

■エロゲ業界がヤバいと言われて久しいですが

さて、最近なにかとエロゲ業界がヤバいと言われ続けています。

特に象徴的な出来事として、つい先日、私が好きなエロゲブランドだった「Lass」の会社が倒産しました。アニメ化もされ、コンシューマーゲームとしても展開された「11eyes」シリーズを生み出したLassでさえ、生きていくには厳しい業界なのだということをまざまざと見せつけられたように感じています。

 

■エロゲの知名度は上がっているはずなのでは?

しかし、私は妙な話だと思いました。ここ数年、インターネット――特にTwitterやPixivをはじめとしたSNSの発達によって、エロゲというものの存在は数年前と比べて遥かに広まっているはずです。
好きなイラストレーターをPixivやTwitterで見かけて、調べたらエロゲの原画を描いてたとか、フォロワーがエロゲの宣伝ツイートやスクリーンショットを拡散していて目に留まったとか、とにかく目に触れる機会は増えていると私は考えています。
にもかかわらず売上が低下しているということは、「エロゲの存在は知っているけど買わない」という人が多いということです。

 

■過酷なレッドオーシャン、消耗するブランド

大半のエロゲは毎月月末の金曜日(いわゆるエロゲの日)に一斉に発売されます。毎月およそ40作前後のエロゲがリリースされ、プレイヤーである我々はその中から思い思いの作品を購入しているわけです。


では、その40本の中からどの作品を購入するか?


その判断基準はいろいろあると思うのですが、残念ながら消費者であるところの我々は全ての作品を購入できるわけではありません。必然的にどの作品を購入するか判断し、選択することになります。その判断基準はブランド、原画家、ライター、作品の世界観など様々ですが、最近はどの作品も非常にクオリティが高く、激しい競争になっています。
競争で優位に立つためには他ブランドとの差別化を図る必要があります。礼としては広告露出の増加やLive2DやE-moteの導入、有名イラストレーターの起用などが考えられるわけですが、それらはつまりお金がかかるということです。そうやってどこかが頑張ると、当然他のブランドも負けないようにお金をかけるわけで。また負けないように……と、連鎖的に出費が増えていくわけです。


しかし、それによってエロゲ1本の販売価格が特別増えるわけではありません。そうするとどうなるかというと、同じ本数のエロゲを売ったとしても得られる利益が少なくなるのです。
それを繰り返していくと、どんどん出費はかさみ、売上は苦しいものになってきます。しかし、そうしないと売れないからそうせざるを得ないのです。
こうした、市場が成熟しきった状態で業界内で血みどろの競争を繰り広げている業界のことをレッドオーシャンと呼びます。エロゲ業界の現状は、まさにレッドオーシャンと言って差し支えないものでしょう。

 

レッドオーシャンの戦い方

この現状を前にして、とるべき対応は以下の二択となります。
・あくまで現状の業界の中で戦い続ける
レッドオーシャンを脱却する別の形態で作品を制作する
前者の場合は過酷な競争に身を投じ続けることになりますが、「俺は今のエロゲが好きだからこういうのを作り続けたいんだ!」という方は結構な数いらっしゃると思います。それ自体を否定する気は全くないのですが、やはり厭世観を抱き続けるのは苦しいものがあるかと思います。
とはいえ、競争脱却のために転機を図るのは容易でないことです。もうずいぶんと長いこと現在の業態でやってきているわけですから、それを急に変えるというのは多大なリスクを背負うことになります。うまくいけばいいですが、うまくいかず早々に失敗、多額の赤字を背負うことにもなりかねません。
ここからは、私が考えた現状の整理と、解決策の案について述べていきます。

 

◆現状把握と分析

こうした目の前の問題に対して、それを解決することを問題解決といいますが、問題解決するには現状を正しく把握する必要があります。

 

■エロゲの競合とはなんぞや?

エロゲは、なにもエロゲ業界内だけで競争しているわけではありません。ラノベとか、エロゲ以外のゲームとか、動画視聴とか……プレイヤーが余暇を楽しむための手段は、エロゲだけとは限らないのです。
とりわけ、数年前からスマートフォンやWebブラウザ上でプレイできるいわゆるソーシャルゲームがものすごい勢いで台頭してきました。私はこのソーシャルゲームこそが、プレイヤーをエロゲから遠ざける一番の競合であると考えています。

 

ソーシャルゲームの強みについて

今でこそ厳しい課金要素が取りざたされるソーシャルゲームですが、そこにはプレイヤーがゲームを長く、多く遊ぶための工夫が多数盛り込まれています。以下はその一例です(カッコ内はゲームプレイヤーの思考代読)。

・事前登録特典/ガチャ
(とりあえず高レアリティのキャラを確保しとこう→せっかく高レアリティのキャラを確保したんだし遊んでみるか)
・基本無料のゲームシステム
(とりあえず最初だけ遊んでみて、面白かったら続ければいいや)
・スタートダッシュガチャ
(今のうちに強キャラを手に入れておけば今後が楽になるな)
・ログインボーナス
(毎日ログインしないともったいないしログインするか)
・スタミナ制
(スタミナ切れたからここまでにしよう→スタミナ溢れるからプレイしよう)
・定期的なシナリオの追加、キャラの追加
(アップデートきたから新しいイベントで遊ぼうっと)

これらは全て買い切りのパッケージソフトでは実現できない、インターネットを最大限効果的に活用したシステムです。これらは全て、プレイヤーがプレイしやすいように最大限配慮され、綿密な計画の下でソーシャルゲームへと誘導されているのです。
そうしてなんだかんだ続けていったゲームというものは次第に愛着がわいてくるもので、課金してそのゲームをより深く楽しもうと考えるようになるのは自然なことだと思います(無課金を貫くプレイヤーもいますが)。
……まあ、その際に要求される課金レベルがえげつないという問題はありますが。それについては今回は置いておきます。

 

■一方のエロゲは……?

では、エロゲについてはどうでしょうか。

・事前登録特典→予約特典と置き換えられることができそう
ショップなどで早期に予約するとヒロインのイラスト色紙がもらえたり、ソフトの購入時に特典がついてきたりします。それ目当てで予約ショップを検討するという方も多いのではないでしょうか。
・基本無料のゲームシステム→そんなものはない
エロゲは基本的に有償のパッケージソフトです。例外的に新作が無料で公開されたエロゲもありますが……大多数は有償ソフトであり、まずお金を払って購入する必要があります。価格も大手ブランドでは8000円~10000円程度と、そう気軽に購入できるものではありません。
・スタートダッシュガチャ→ない
・ログインボーナス→ない
一部、ヒロインの誕生日に起動すると特別なイベントを見ることができるようなものもあります。定期的にログインする行為に意味はないです。
・定期的なシナリオの追加、キャラの追加→ない
ここではファンディスクや続編ではなく、ソフト単体を指します。ごく一部の作品ではアペンドもあったりしますが、大多数は追加要素がないことがほとんどです。

……と、このように、あまりプレイヤーに長く遊び続けてもらうという工夫はありません。一般的なエロゲはノベル形式ですし、RPGのように長時間プレイするものではありませんが……それでも、以前まではそれでいいと思っていました。
ですが、今はソーシャルゲームによって「ある問題」が浮き彫りになったと考えています。

 

■エロゲ購入はハードルが高い問題

基本無料のゲームが多数台頭する中、有償のエロゲを購入するのはハードルが高いということがわかりました。
フルプライスで1万円弱という金額を払って、でも内容が面白くなかったり期待外れだったらどうしようとか、最近忙しいし買っても積んでしまうんじゃないかとか……。
現代人はとかくリスクを恐れます。失敗に厳しい世の中であったり、あまり収入に余裕がなく贅沢な出費ができなかったり、理由は様々だと思いますが。


しかし、エロゲには体験版という文化があります。体験版をプレイしてみて、面白ければ本編を購入する……それが体験版の担う役割のひとつであることは間違いないでしょう。
しかし、実は体験版をプレイすることにもコストがかかるのです。ここでいうコストとは金銭のことではなく、プレイヤーの「時間」です


ブランドのHPにアクセスして、体験版のダウンロードページに飛んで、体験版をダウンロードして、プレイする。その一連の流れをこなすには数十分とはいえ時間がかかります。購入するか悩んでいるプレイヤーが、購入を悩んでもいないけど今月の新作チェックに巡回しているプレイヤーが、その作品に対してそれだけの時間を捻出するほどのモチベーションを持っているかという観点については一考の価値があると思います。

 

また、ソシャゲの方がガチャで多くのお金を注ぎ込むことになるから結果的にはエロゲの方が割安、という考え方もあります。しかし、ソシャゲの場合は「課金するつもりじゃなかったけど気がついたら課金していた」という現象もあり、一概に割安と断ずるのも難しいと考えています。

 

■エロゲのコンテンツ鮮度短すぎ問題

こちらはブログの前記事でも話題にしましたが、エロゲがノベル形式のパッケージゲームである以上、余暇を全力で注ぎ込めば数日もあれば全てのシナリオを見終えることができてしまいます。
しかし、ソシャゲは継続するコンテンツであり、定期的なアップデートによって1つの作品を数年単位で遊ぶことができます。読んで終わりのゲームよりも、長く続くゲームを仲間とSNSなどでわいわいやる方がより長く楽しめるというのは現行のエロゲには実現できないものです。


最近ではDMMゲームズを中心にエロ要素のあるブラウザゲームも多数登場しており、基本無料で長く楽しめる成人向けゲームというものも台頭してきています。それらに時間もお金も吸われてしまえば、エロゲに向けるお金や時間、行動が縮小していくのも道理というものです。

 

このような新しい文化に即した新しい形態のコンテンツが台頭してきたことにより、エロゲという歴史の長いコンテンツが時代に沿わなくなってきた、というのが私の考えた結論なのです。

 

 

 

長文になってしまったので今回はここまでです。次回(明日6/9投稿予定)は上記の問題とどうすれば向き合っていくことができるのか、実例などを交えて紹介できればと考えています。

エロゲは「売って終わり」じゃもったいない!

 久しぶりにブログ更新したと思ったらなんだこの記事は……と思われる方もいらっしゃるかもしれません。

自分の考えを整理する意味もあって勢いで書いてしまいました。

 

さて、私のツイッターをよく見ていただいている私はご存知かと思いますが、私はエロゲをよく購入してプレイしています。

最近のエロゲはどれもイラストのクオリティが非常に高く、またキャラクターも魅力的です。そんなキャラクターたちが躍動するシナリオ、それらを盛り立てる音楽やグラフィックなど、今やエロゲのクオリティは恐ろしく高いものになっているのではないかと考えています。

 

しかし……しかし、だからこそ思うのです。

エロゲがエロゲだけで終わってしまうのは、非常に寂しいものだ、と。

 

ゲームをプレイしている間、私は前述のとおりそのゲームに没入し、そのシナリオを、グラフィックを、音楽を堪能します。

素晴らしい作品に触れると、私の中に強い熱量が生まれます。それは、「このゲームはすごく楽しめた」といった感想であったり、「こんな話を自分も書いてみたい」という願望であったりさまざまです。

ですが、ひとたびその全シナリオをクリアしてしまえば、それ以降新たに得られるものはありません。

「ゲームなんだから、終わりがあるのは当たり前だ」というのは、確かにその通りなのですが……。

これは、最近私がいわゆる運営型ソーシャルゲームをプレイしていて、継続的にコンテンツが供給されるから余計に感じることなのかもしれません。

 

エロゲを購入して、隅々までプレイをして、感慨に浸って、人によってはレビューなんかも書いちゃったりして……そうして盛り上がったら、その作品はもうそこで終わりなのです。

たまにシナリオを読み返したり、シーン鑑賞したりすることがあったとしても、それは同じことを反芻しているだけで、新しいものを得ているわけではありません。

そのとき燃え上がった熱は、その場限りのもので。燃料を得られない炎は、やがて立ち消えてしまう。

 

私は、それを非常にもったいないと思うのです。

 

私がそう感じる要因のひとつに、「事後の宣伝活動が乏しい」というのがあると考えています。

最近のエロゲブランドのツイッターアカウントなどを見ていると、作品の発売前には

・フォロー&リツイートキャンペーン

・発売前イラストやボイス、動画、体験版の公開など

・発売当日の記念イベント(お渡し会など)

といった宣伝活動を活発にされているのに、いざ発売すると「発売中!」という定期的なツイートばかりになり、事後の宣伝活動、事後の展開が事前に比べて圧倒的に不足していると感じます。

私はエロゲ業界の人間ではないので詳しい事情は知らないのですが、ラノベや漫画などと同様に予約や発売初週の売上を重視されているのかなあと思っていたりします。

 

上記をまとめると、「作品の発売がゴールになっているのではないか? 本当にそれでいいのか?」というのが、今のエロゲについて思うところです。

 

と、自分の仮説をまとめたところで。

ここからは、私の「こうあってほしい!」という個人的な願望を書き殴ったものになります。

 

◆スピンオフシナリオの公開

本編のネタバレにならない程度のスピンオフシナリオ(前日譚など?)を公開することで、

・ゲームをプレイした人が世界観を更に楽しむことができる

・ゲームをプレイしていない人に興味を持たせ、ゲーム本編の購入を促す

効果が期待できると考えています。

広く知られることが重要なのでWebでの無料公開が前提になるかと思います。原稿料は広告収入や本編の売り上げ増加分でカバーするしかないですね……。

 

◆有料アペンドパッチの発売

ファンディスクという形態はよく知られていると思いますが、ファンディスクは基本的にミドルプライス~フルプライスの大がかりなもので、制作には時間がかかったり費用がかかったりします。よほどの人気作でもない限り、ファンディスクが出ることはそうそうありません。

そこで、ミドルプライスよりも更に安価な本編のアペンドパッチで、シナリオを補強するという手段を考えました。

よくあるのは追加キャラクターやサブキャラクターのヒロイン昇格シナリオでしょうか。個人的には後者があると嬉しいですね。

2/9(木)21:15追記:この考えは新規獲得というよりも既に購入しているユーザーに対する追加施策ですね。自分の考えを思うまま書いていたら説明が不足していました。申し訳ありません)

 

実現可否については各ブランドの考えによるところもありますし、しょせん門外漢が描いた机上の空論なので難しいところはあると思うのですが、私が希望しているのは「ゲームの発売後も継続的にコンテンツを提供することで、既存ユーザーの熱量を持続させ、新規ユーザーを獲得し、ブランドのファンを増やす」というものです。

 

これは、昨今のマーケティング事情でいうところの「コンテンツマーケティング」に近い考え方です。作品の販売目的に限らず、様々な情報を発信することによってユーザーの興味を引き出し、ブランドに興味を持ってもらう、あるいは結果的に作品を買ってもらうというもので、即効性はないのですが継続的に効果を発揮していきます。

この考え方は、エロゲーに限らず今後重要になってくると考えています。機会があればブログ記事にでも書きたいところです。

 

新作として月末に発売され、その週のうちに大多数が購入されたとしても、作品はその後も店頭に並びます。売れればお金になります。初週の売り上げも重要ですが、その後も少しずつでも手に取る人が増え、ブランドを知る機会が増えることは、後の新作を手に取る人が増えることに繋がり、結果としてブランドとしての成長に結びつく力になると考えています。

 

近年はエロゲブランドも増え、 毎月多くの作品が出るようになりました。その結果、ユーザーの奪い合いになり、初週に狙いを定めた戦略が顕著になり、発売した作品をフォローするよりも新作を作って発売した方が有効になってきたのかもしれません。

その傾向自体についてはこの記事でどうこうはいいませんが、ひとつひとつの作品が使い捨てのようにすぐに消えていくのではなく、長く楽しめるコンテンツとなることを願ってやみません。

 

最後に。仮定ばかりで根拠の乏しい記事になってしまいました。記事の内容に誤りや問題などございましたらご指摘いただけますようお願いいたします。

目指すはライトノベルの「王道」―サークル「涼風郡」と鞍馬子竜の進む道

「私が書きたいもの、表現したいものはいったいなんだろう?」

 

私が同人小説をまともに書き始めたのは2011年の1月から。気づけばもうすぐ6年が経とうとしています。

これまでいくつもの小説を書き、小説同人誌を頒布してきたわけですが、最近ふと基本的な問いに立ち返ることがあります。それが、冒頭の問いなわけです。

 

小説を書くのは大変です。小説を書くのは好きですが、書き上げるまでには相当な時間や労力が必要になります。もちろん、これは小説に限らず全ての創作活動に言えることですが。

そうしてでも書きたいものは何か。具体的にはいくつかあるのですが、それらを一つにまとめると「読んで楽しいと思える、ライトノベルの王道」となるでしょうか。

 

・魅力的なキャラクターたちが織りなす友情やラブコメの楽しさ

・息が詰まるほど熱いバトルシーン

・胸を打つシリアス

・主人公たちが壁を乗り越えようとまっすぐに立ち向かう熱い姿勢

・それらを乗り越えた果てにある読後の清涼感

 

文字にすると単純ですが、実際に書いてみると本当にこれらを満たすことができているのか? と疑問に思うことがしばしばあります。ですが、心持ちとしてはこれらを十分満たせるようなものを書きたいと意識しています。

特に、最後に挙げた「読後の清涼感」というのは、私のサークル「涼風郡(すずかぜのこおり)」というサークル名に込められた想いでもあります。私の書いた本を読んでいただき、これらを感じていただけるのならこれに勝る喜びはありません。

 

 

これは余談ですが。

自身の創作にかける想いややりたいこと。それをサークルの、個人のコンセプトとして前面に押し出すことは、その人の作品に興味を持つかどうかとって割と重要な要素じゃないかと思います。

今後も隙あらば自分語り……ではなく、創作に関するあれこれを記事にしてみたいなーと思っています。

それでは。