子竜の年代記

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エロゲ、アニメ……サブカル業界は「変わらないからこそ」変化している

お久しぶりです、子竜です。

6月に投稿した記事「なぜ今エロゲ業界がヤバいのか? 一般エロゲーマーの思うところ」をお読みいただいた方におかれましては誠にありがとうございます。

 

shiryuk.hatenablog.com

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投稿した当初はほとんど閲覧されることなく、日間100PVくらいの微々たるものでしたが、7月のとある数日でPVが急激に伸び、突然のことに何が起きたのかと慌てて調べました。
どうやら、エロゲ業界関係者がこのブログを引用してTwitterで言及されたようで……その引用を見た人がさらにホームページにこのブログを掲載するという連鎖が発生し、それによって一時的にPVが跳ね上がったようです。やはり影響力のある人に発信していただくというのは効果があるのだなあと実感すると同時に、自分自身にそれだけの影響力がないことも痛感した次第です。

さて、こうして多くの方に言及していただいたり、ありがたいことに本当にメールを送ってくださった方もいらっしゃいました。それほどまでに思うところがある方がいるということで、やはり非常に関心の高い問題なのだと実感しています。
そして、そういったメールや言及の数々を見ていると、大変残念なことに私の考える現状の問題がおおよそ現実であり、大きな誤りはないということがわかりました。私の懸念は考えすぎで、エロゲ業界はそのような危険な状況ではないのだという反対意見を待っていたのですが、その、ありませんでした……。

ということで、現実は現実として受け入れ、その上で未来を見据えて動かなければならないでしょう。

今回はそうした経緯を踏まえて、現在起きている変化について簡単にですがまとめておきたいと思います。

 

◆行き詰まるサブカル業界

エロゲ業界に限らず、アニメや漫画、ライトノベルといった業界も、昨今では売り上げが低迷し、業界全体として厳しいという話を耳にします。
市場がある程度成熟してしまった以上、仕方の無いことではありますが、だからといって業界の衰退を眺めているだけ、というのはまさに自殺行為です。

私が観測している範囲でも、ここ数年で少しずつ業界の大方針的なものに変化が起きているように思います。
例として紹介するのは以下の2点です。

・あっぷりけのエロゲ制作クラウドファンディング
・オタク向けアニメ映画の週次来場者特典

 

■あっぷりけのエロゲ制作クラウドファンディング

前回のブログ記事でも紹介したとおり、エロゲブランド「あっぷりけ」のディレクターである憲yuki氏ニコニコ生放送を開き、重要なお知らせを行いました。

・あっぷりけの10周年であること
・10周年記念となる新作の制作ができる資金状態にないこと
・資金調達がままならず、新作の制作が困難である以上、ブランドを畳むことも考えたが、まだやれることがあるはずとし、クラウドファンディングによる新作制作資金調達を行うこと

ざっくりと要点をまとめるとこんなところでしょうか。
あっぷりけの作品は「コンチェルトノート」で初めて知ったのですが、シナリオフローチャートなどとても丁寧な作りで好感を抱き、シナリオも非常に高品質で感動を覚えました。

特に、直近の新作である「時を紡ぐ約束」は私の地元である大分県を舞台にした作品であり、そういった意味でも応援しているブランドでありました。

そのあっぷりけですら、活動が立ちゆかなくなるほどの状況である……これははっきりいってかなりの衝撃でした。

ディレクターの憲yuki氏も重要なお知らせニコ生やその後のニコ生およびツイッター、CFサイトなどで語られている通り、クラウドファンディングを行うことについては業界の内外問わず賛否あることでしょう。
特に、今回は一般的なクラウドファンディングにある「新機軸の製品を考えたけど制作費がないから出資して欲しい」という形ではなく、ぶっちゃけ「いつも通りの作品を作りたいけど制作費がないから出資して欲しい」というもので、それをその場しのぎの延命措置と見るのは至極当然の考え方です。
もちろん、ブランド側もそれを承知で今回の企画を立ち上げたわけですし、出資する側もそれを理解した上で……という形になっています。賛否があろうとても、やりたいからやる、というブランドの姿勢は、賛否ありこそすれ排除されるものではないと考えています。

また、一部には「これが悪しき前例となり、今後同様のことを考えるブランドが増えるのでは」や「結局その場しのぎで先行きが不透明なのだから、また次回作の制作費が足りずクラウドファンディングになるのでは」といった意見もあります。
その懸念はもっともですし、現状の業界を考えるとそうなる可能性は決して低いものではない……例えば、これで見事調達に成功すると、後を追うブランドがないとは言い切れません。

ですが、私は今回のクラウドファンディング企画、並びに今後も他ブランドや次回作で制作費調達(全額、一部問わず)のクラウドファンディングが今後行われることに対しては別にいいんじゃないかと考えています

そう考える理由は2点あります。

1点目は、「そうしてでも守りたい業界・作品なら、そう思っている人が多く出資して守るというのもひとつの考え方ではないか」と考えているからです。
本当に、心から欲しいと願うものであれば、それがいくらであろうとある程度なら価格を気にすることなく購入するのがファンの性というものです。従来の定価よりも数倍程度の金額を出して作品を購入するというのはもちろん安い買い物ではありません。ですが、そうしなければ望みの作品は手に入らない……逆に言えば、結果として望みの作品を手に入れることができるというなら、多少多めに支払うことも致し方なしという考え方もなくはないでしょう。
……まあ、あくまで致し方なし、程度かなと。喜んで出資する、という人はもちろんいると思いますが、それが大多数というわけではないでしょうし。「本来ならクラウドファンディングなどしなくても資金調達できるのが当然で、クラウドファンディングをせざるを得ない状況、一部のファンから多くの出資を求めざるを得ない状況が異常なのだ」というのが正論でしょう。
ある程度ファン層だけで固まった、狭い業界だからこその互助的な考え方ですので、前向きな考え方ではないですが……ひとつの意見としてはアリじゃないかと考えています。

そして2点目は、「これまでになかった大きなリターンを得ることができるというメリットが新たに発生した」というものです。
これまではエロゲのグッズといってもせいぜいがコミケや電気外祭りで販売されるグッズ、あるいはショップの予約特典程度しかありませんでした。
しかし、あっぷりけのクラウドファンディングのプラン一覧を見ていると、オープニングムービーに自分の名前が載るとか、ヒロインからお礼ボイスがもらえるとか、打ち上げに参加できるとか……これまではお金を積んでも得られなかったそのエロゲ作品関連のあれこれを、多額の出資さえすれば得ることができるのです。
これまではエロゲの複数買いやコミケ参戦などでいくらお金を積んでも得られなかったものが、今回は得られる。そして、好きなブランドに出資して作品の制作に貢献できる……これは、コアなファンにはたまらないものでしょう。
個人的には、エロゲ業界には資金難によるクラウドファンディングでなくとも、こういった出資額に応じた多様なリターンを得られるクラウドファンディングをもっと増やしてコンテンツの幅を広げて欲しいという想いもあるのですが……それは今は置いておいて。

とまあ、私の私見を述べさせていただきましたが……果たして今回のあっぷりけクラウドファンディングは成功を収めるのか、はたまた失敗してブランドが潰えるのか……私自身もいちあっぷりけファンとして出資しながら行方を見守りたいと思います。

↓あっぷりけのクラウドファンディングサイトはこちら

uneedzone.jp


■オタク向けアニメ映画の週次来場者特典

私が「業界が縮小しているなら、ファン層から多額の出資を求めるのは全くの間違いとは言いがたい」と考えている理由のひとつに、最近のオタク向けアニメ映画があります。
オタク向けアニメ映画として、私が最近鑑賞したのは「劇場版 艦これ」と「劇場版 魔法少女リリカルなのはReflection」の2作品です。
この2作品に共通する事項として、「劇場来場者特典が毎週変わる」というものがあります。
例えば、「劇場版 魔法少女リリカルなのはReflection」では映画のラストに特典映像が放映されますが、その内容は毎週変更になります。
つまり、全ての特典映像を見たいのであれば、毎週映画館に通い映画を見なければなりません。特典映像を除く、映画本編の内容は全く変わらないのに、です。
それでも、私はこの作品を2週連続で見に行っています(3週目も行きます)。やっぱり映像特典は気になりますので……。

 

◆おわりに:時代の流れをどうするか?

上記に紹介したとおり、こうしたゲームやアニメなどのいわゆるサブカル業界は現在、「業界規模が縮小しているならば、コアなファンにより多くのお金を落としてもらえる仕組みを作ることで業界を成長・維持しよう」と躍起になっているように見受けられます。

特に、スマホやブラウザ上でプレイする基本無料ゲームの課金要素などは最たるもので、無課金勢と廃課金勢で1つのゲームタイトルにかけた金額の差などは数えるまでもないでしょう。
これは、業界が今までと変わらずあり続ける限り、避けられない時代の流れなのだと考えています。

こうした時代の流れに呑まれて消えていくのも、流れに従って流れるままを生きるのもひとつの道でしょう。あるいは、今の時代の流れを良しせず、流れを変えるべく変革を期するのもまた自然な流れです。

サブカル業界はこれからどうあっていくべきか。どうあってほしいか。そのために、私に何ができるのか。
まだまだ考えることは尽きず、また決定的な答えを出すには至っていないのが現状ですが、ひとつでも、小さくても答えを得られるよう、今後も情報や知識を収集して行きたいと考えています。

 

もし本記事を読んで、「もっと詳しく話を聞きたい」とか「お前は業界関係者を怒らせた。記事は即刻削除しろ!」とか「その知見でぜひ弊社のブランドに力を貸してほしい」などのお話をいただけるのであれば(最後のはちょっと自意識過剰ですが……)、
kurama.shiryu@gmail.com
までメールをいただけますと幸いです。

簡単な質問やご意見ご感想、記事内容の誤りなどございましたら本記事にコメントをいただければと思います。

 

それでは、きっとまたお会いしましょう。